*ちょっと不健全?な上にキョーコちゃんが偽者くさいです(苦笑) *けど尚キョだとこういうキョーコちゃんが一番好きなんだ―――っ!! 「ねえしょーおー、こっち来てー」 「んだよ」 キョーコの声が聞こえたがお笑いに夢中な今は梃子でも動きたくない。 だがこれが後にも先にもまずかった。 「アンタは黙って来りゃいいのよ。じゃないと本名バラすわよ、ショータロー」 「んなっ」 一気に不穏な空気を漂わせるようになったキョーコのいる一角と俺には効果覿面のたった一言。 大好きなものを中断させなければいけない悔しさとその言葉に結局は逆らえない歯痒さとで自然と立ち上がる動作も歩く音も乱暴になる。 「一体何だってんだよ!!この俺様を呼び出すからにはそれ相応の理由がっ・・・・?!!!」 ドアノブに手を掛け、勢い良く開いた。 ・・・・・・までは、良かった。 だが、そこには予想外の物―――そう、予想の範囲内に欠片も存在していなかったものがあったのだから俺がフリーズするのも仕方がない。 つーか夢じゃねぇのか、コレ。 頬を抓ってみた。→痛い。 目を瞑り、大きく深呼吸を5回。再び目を開く。→やっぱり居る。 今日までのスケジュールを確認。→昨日今日とオフだ。疲れている筈がない。→幻覚じゃない。 結果→目の前のモノはホンモノで、尚且つ未だ隠そうともせず堂々と腰に手を当てて仁王立ちしている。 そこまでの思考と行動が約1分。俺は耐え切れずに叫んだ。 「おまっ・・・・・!!なんて破廉恥な格好してやがる―――――――――――――――――――っっっ!!!」 流石歌手。 流石俺様。 ああ、この部屋防音効いてて良かった。 半ば現実逃避をしながらそれでも相手の出方を待つ。 「今更でしょーが。裸だって何回も見てるクセに」 「わーっわーっわーっ!!!」 何なんだコイツは?!あの俺が上半身裸にして歩いてただけで真っ赤になってたキョーコが俺とはいえ男の前で下着姿で仁王立ち!!しかもそれを咎めれば「今更」と返してくる。ああ、あの頃のキョーコはどこへ行ったんだ? 「で、どうなのよこの下着の感想は?」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 正直、かなりイイ。 流石幼馴染みと言おうか俺の好みを押さえた上で自分の魅力を最大に引き出す下着だ。少し気を抜いたら今にも抱き締めてしまいそうな・・・・・。 まあ、つまりはヤバイってことだ。 「さっさと言いなさいよバカショー」 くっそ、コイツ人の気も知らないで・・・・・・っ!! ぎん、と逸らしていた視線を戻せば何故かメルヘン世界に飛び立とうとしているキョーコが。 「おい、キョー・・・・・」 「この下着ね!!モー子さんが選んでくれたの!!もう私嬉しくって嬉しくって!!だから誰でもいいから自慢したかったし感想も聞きたかったのvvv まあ、一番なのはモー子さんに見て貰うことなんだけど・・・・・・。」 そこでしょんぼり、と俯いてしまったキョーコだったがまた直ぐに元のように復活した。 「でもいいの!!あの恥ずかしがり屋のモー子さんが『アンタに似合うわよ』って言ってくれたんだもの!!もうそれだけで私幸せだわ〜vvv」 ・・・・・・・惚気、だよな、コレ? 「で、感想はどうなのよ馬鹿ショー」 途端クール?になるキョーコ。 これってどうなんだ。一応彼氏という立場である筈の俺がなんで親友という立場である筈の『モー子さん』の惚気を聞かされなくちゃならないんだ。普通逆じゃねぇのか。 沸々と湧き上がる怒りに狂暴な衝動が押し寄せる。 「キョーコ」 「・・・・・・何?」 声音の変わった俺に気づいたのだろう、キョーコが不審と警戒を混ぜたような顔で見てくる。 けっ、おっせぇんだよ。 「痛っ!!」 キョーコを無理矢理壁に押し付け、露わになっている胸元に紅い印を残す。コイツは俺のものだと周りの連中に知らしめるための、その手段。 「ちょっとバカショー!!やめなさいってばっ!!」 「やだね」 先ほどから引き続き胸元に紅い華を咲かせ続けていると頬に何かが落ちてきた。 疑問に思って上を見上げるといつかのPVの撮影のとき、そして幼い頃には何度も見たあの泣き顔があった。 「キョーコ?!!」 慌てて行為を中断し、相手の様子を見遣る。どうも俺はコイツの泣き顔に弱い。もう一種のトラウマみたいなモンだ。 「・・・・・キョーコ?」 俯いたまま何も喋ろうとしないキョーコになるたけ優しく聞こえるように名前を呼ぶ。何か答えてくれる事を期待して。 「・・・・・・・・っ」 震えるキョーコにそれほど怖い思いをさせてしまったのかと、――――――また、俺を憎んだような目で見るのかと内心気が気じゃなかった。 「ふっ・・・・・・くくっ、あはははははっ!!アンタ最高!可笑しすぎるわ!!」 ――――なのに、このオンナは爆笑しやがったのだ。 「・・・・・・・・・・・・あぁ?」 「くっ、ア、アンタ、私が女優だってこと忘れてない?」 状況が分からずにただ立ち尽くすしかない俺の肩をバシバシと遠慮なく叩きながらなおも笑い続けるキョーコ。 その姿に、段々と動きの鈍っていた脳が活性化し始め、一つの推論が頭に浮かぶ。 (つまり俺は、騙されたのか?) 「テメッ、本当に犯すぞ、コラ!!」 するとキョーコは京都にいる頃はしなかった、いや、できなかった『オトナのオンナ』の笑顔をニヤリと浮かべてこう言い放ったのだ。 「やるならやれば?ま、できればの話だけど?」 「ンだとっ・・・?!」 ここまで言われて引き下がれるほど俺はオトナじゃないし元々そういう性格でもない。 本当に実行に移してやろうかと引いていた足をまたキョーコに向けて踏み出したとき、キョーコは更に俺の動きを止めるには充分な一言を言い放ってくれた。 「本当にやるならその間中またあんな風に泣き続けてやるから」 その場に凍るしかなかった。 「だってこの下着モー子さんが選んでくれたやつだし汚したくないのよね。引っ張って紐がヨレヨレになっても嫌だし」 またニヤリ、と艶やかな、煽るには充分な笑みを浮かべたキョーコはわざわざ背伸びをして俺の耳元で囁いた。 「アンタがあの泣き顔に弱いっていうのは知ってるの。たとえそれが演技だとしてもね」 だから、と一度区切ってキョーコはまた続けた。 「どっちにするか、頑張って悩んでね、ショーちゃん」 ・・・・・・・・もう、完全に敗北を認めるしかなかった。 Which is winner? ----Of course, Winner is kyoko !! |