「オイ、さっさと離せ!!これから待ち合わせしてんだよ!!」 「やーよお。どうせ待ち合わせってオンナなんでしょ?」 さっきから腕に絡み付いてくる同じ事務所の・・・・・・確か一度だけ抱いたことのある女。 あの時は割り切れる大人の女だと思ってたのに人が変わったように俺にだけは執着するようになった。 これも俺様の美貌のお陰なんだろうが今はマズイ。 ―――なんせ、このTV局でキョーコと待ち合わせをしているのだ。 「オイ!!」 もう一度語気を強めて言ってみるが、聞かない。 それどころか益々胸を俺の腕に押し付けて強調させてくる始末だ。 一度手放してしまった、酷く傷つけてしまったキョーコが。 やっとアイツが俺のモンになったっていうのに、いや、なってくれたっていうのに、こんな些細なことでまたアイツを無くすのは嫌だ。 かと言って女相手に乱暴にするのも男としては躊躇う所だ。 ああ、どうしたモンかと普段悩ませる事などない頭を精一杯にフル回転させていた所に身に覚えのある冷たい空気が。 (まさ、か・・・・・・) 信じたくない気持ち1000%、裏腹に確信度1000%。 俺はゆっくりと振り向いた。 そこには名実ともに売れっ子女優となった『京子』の背筋の凍るような笑顔があった。 (おわ、った) *** あれから絡み付いていた女を力ずくで引き剥がし、傍から見たらただの笑顔にしか見えない笑顔に怯えながらなんとかキョーコを宥めすかして車で俺のマンションに連れ帰ってきた。 そして今、キョーコはソファに足を組んで座り、俺はと言えばフローリングの上に正座をしていた。 「・・・・・・・・で?」 恐ろしく長く深い沈黙の後、キョーコの無駄に明るい声が静かに部屋に響き渡った。 怒っている。 これは、怒っている。 恐ろしくてとても顔など上げられない。 「・・・・・・『で?』、って・・・・?」 絞り出した声は情けないほどか細く、普段の俺からは考えも付かないような声だった。これはデビュー当時からマネージャーをしてくれている祥子さんすら驚くだろう。 「勿論、TV局での事に決まっているでしょう?」 益々輝くように明るくなっていく声に比例してか額に浮かぶ汗も増えていく気がする。 「あれ、は・・・・」 「あれは?」 正直に言ってしまうべきか、嘘で誤魔化すべきか・・・・・。 って俺は何考えてんだよ!! 誤魔化すも何も俺は浮気なんざしてねぇしアレはあの女が勝手に絡みついてきただけであって・・・・。 「ふーん、あのグラビアアイドルの藤田ゆうかが望みもしないのにお誘いを掛けて来てくれた、と」 「そう、確かそんな名前の・・・・?!」 って、なんでキョーコがんなに詳しく・・・・?! 「アンタ顔に出るのよ。ほんっっと!バカね!!」 ふー、と肩で息を吐きながらわざとらしく首まで竦めるキョーコ。 それに流石に頭に来て文句を言ってやろうとした矢先にそれを牽制するかのようにキョーコは俺の目の前に指を突きつけた。 「けどあんな風に絡みつかれる隙がアンタにもあったんでしょ。なら有罪よ」 そして更ににぃ、と小悪魔のように笑い、キョーコは判決を言い渡しのだった。 「今夜はとっておきのネグリジェ着て寝てあげるから大人しく私の腕枕になってね♪」 判決、有罪。 処罰、蛇の生殺し。 心底楽しそうにそれを言うキョーコもキョーコだと思ったがそれに逆らえない俺はもっとどうかと思った19の夏。 *あっはっはっは!!!!!(大爆笑) *キョーコに逆らえない、従わされちゃってる尚大好き!! *こういう尚キョが増えてくれればいいのになー・・・・。 *ちなみに副題は「アンタなんて有罪よ」です笑 |