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04 『FULL MOON』 監督:緒方 啓文 脚本:萩月 修 CAST 本郷 未緒 : 京子 高倉 誠二 : 敦賀 蓮 ・ ・ ・ ・ ・ このドラマの製作発表が行われたとき、それはそれは話題になった。 なにしろ『DARK MOON』で大きすぎる父親の影から飛び出し、名実共に名監督と認められた緒方がまたメガホンをとる。それだけで内容は期待できる。 そしてもう現役は退き、今まで何度もあった脚本や短編集の発売などの話をことごとく蹴っていた萩月修が頼み込まれて渋々、という形ではなく自分から進んでこの話を監督である緒方に持ちかけたと言う。 そして何よりも『DARK MOON』で際立って『いい演技』をしたと評論家達が声を揃えて絶賛した敦賀蓮と京子の主演である。 今度はどう視聴者たちを魅せてくれるのか、と取材中の記者たちですらわくわくとした気持ちを抑えきれないでいた。 *** この話を社さんから聞いた時、正直迷った。 断ろうかと一瞬本気で考えてしまったほどだ。しかし社さんの「え?もう社長命令で引き受ける事に決まってるけど」という言葉と・・・・・・自分が断れば、彼女が別の男とラブシーンを演じるという事に――例え嘘だと解かっていても――耐え切れないだろう、とこの切ないほどの想いを自覚してしまった以上、そう思った。だから決死の覚悟で『FULL MOON』の初顔合わせに向かったのに。 君ってきたら。 「あ、敦賀さん!!おはようございます!!」 きっちり90°。元気が良すぎるほどの挨拶を彼女は向けてくれた。 てっきり、「ラブミー部員なのに恋愛ドラマだなんてぇ〜〜〜!!」とか悩んでると思ってたのに。 何なんだ、その眩しすぎる笑顔は? 俺なんて想いを隠し通す自信すら今の段階で怪しいというのに。 (彼女は悪くない) そう解かってはいても感情は付いていかない。 自分はこれだけ君との恋愛ドラマに悩んでいるのに君は大した事ではないと思っているのか。 そう思うと自分の押さえが利かなくて彼女曰く『嘘・毒吐き紳士スマイル』らしい『敦賀蓮』の笑顔を向けて―これは俺も自覚はあるが―必要以上に笑って見せた。 「おはよう、最上さん」 途端、彼女はピキッと音がしそうに固まる。 その変化は見ていて極端すぎると思うほどだ。 「・・・・・・あ、あの、私何かしましたでしょうか」 顔を青褪めさせて恐る恐ると聞いてくる。 そうやって若手俳優No.1と言われている俺の演技に騙されない、本当の俺の気持ちに気づいてくれる所は嬉しいけれど。 それでもやっぱり足らないよ、最上さん? 「ん?何の事かな?」 更ににっこり笑って見せるとじりじりと後退りながら首を精一杯振り、『そんなの嘘よおぉぉぉぉぉっ!!!』とでも言いたそうな顔で見てくる。 「今『そんなの嘘よおぉぉぉぉぉっ!!!』って思っただろう、最上さん?」 『当たってます』と全身で表現しながらも女優の意地ができたのか必死に白を切ろうとする最上さん。 そんな彼女を追い詰め、壁に手をつき、上から彼女には効果絶大であろう最上級の笑顔を向けて。 「ん?」 「・・・・・・っ、お、思いましたあぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!!!」 おそらく養成所で鍛えたのだろう素晴らしい声量でどぱぁっ!!っと勢い良く涙を流しながら平謝りしてきた。 そうして、初顔合わせは共演者やスタッフたちの注目を一身に浴びて終了したのだった。 ・・・・・・流石の俺でも、少し恥ずかしかった。 *敦賀氏イジメをしようと思って書き始めてたのに・・・。 *いつの間にか本誌で良く見てた展開に苦笑 *どうやら敦賀氏は手強過ぎて私の手には負えないようです笑 |